耐震補強目地材開発PROJECT

災害時給水ステーションの看板と災害用トイレが設置されている様子。キャプション「ひとたび災害が起これば、飲料水の確保や下水の処理はたちまち難しくなってしまう。」

震災が起きた時、なんとか避難所へ辿り着いても、そこには大きな問題が待っていた。
阪神淡路大震災や東日本大震災を経験した被災者の中には、「水が止まってしまいとても困った。特にトイレは壮絶でした。」と、悲惨な状況を話す人もいた。

水道から水が出ている。キャプション「災害時にも、”水が使える当たり前”を守ることはできないか。」

上下水道設備を地震から守るプロジェクトは、阪神淡路大震災の教訓を受けてスタートした。

商品開発の相談を受け、「目地材」を開発。

水道関連設備の様子。いくつかのコンクリート製の構造物が組み合わせられて空間を作っている。キャプション「上下水道設備は、コンクリートでできている。」

コンクリートは、気温差や湿度等により伸縮したり、地震などにより地盤が動けば構造物そのものが破壊されてしまう。そのため、大きな構造物をつくる場合、数十メートルおきに目地(切れ目)を設けて建造する。

地震によって地盤が大きく動いた場合、この目地が広がり、水が漏れ出したり、逆に浸水して、設備が使えなくなってしまうのだ。

目地の写真と目地材のカタログが並べられた写真

ゼネコンから耐震補強に関する商品開発の相談を受けたシバタ工業は、目地が広がっても止水機能性能を損なわない、「目地を補強する製品=目地材」を開発した。

この初代目地材は、1998年に関東地区の水道関連施設の2案件に採用され、大きな成果を上げた。

ニーズが高まるにつれ、ライバルが増えていく…

耐震補強という市場のニーズが高まるにつれて競争相手も増え、初代目地材は、価格面等の条件で苦戦するようになってしまった。

「初代目地材では戦えない」と判断した営業部門は、2003年、技術部門にライバルに勝てる新しい目地材の開発を依頼した。

目地材の製造風景。1人がしゃがんで床に置かれた目地材を加工し、もう1人が資料を片手に確認を行なっている。キャプション「技術部門は、わずか半年後に新しい目地材を完成させた。」

シバタが得意とするゴム+α、ゴムと金網を複合したハイブリッド素材で、性能面では顧客を満足させるのに十分だった。

しかし、短期間での開発が裏目に出る形となり、思ったより価格が抑えられなかった。

敗北寸前…からの逆転勝利。

性能が良くても、採用されなければその真価を発揮することはできない。
かねてよりライバルと競っている案件の発注先が決まるまで残りわずかとなっていた。

技術部門は製品改良の使命に燃え、目地材にさらに改良を加えた。
ゴムと異素材との組み合わせを見直し、金網ではなく繊維に変更してみた。

目地材の製造風景。4人の社員がゴムを持ち上げ、機械に入れている。

薄くてしなやかになった目地材は施工性の向上により工事コストが削減でき、さらに意外なことに目地材自体の強度も大幅にUPした。

目地材のテスト風景。枠に目地材を取り付けられており、枠の上には定規が置かれている。

性能、コスト、施工性でライバル社に大きく差をつけた3代目目地材は、全国から注文が来るようになり、わずか7年で北は北海道、南は沖縄まで、日本全国で実績を上げた。

今後は地下鉄、発電所等さまざまな構造物や場所で応用し、より多くの命を守る素材としての活躍を目指している。